このたび、旅する気候ジャーナル「船と風」を創刊します。
日本ではあまり注目を浴びてこなかったテーマや論点に焦点を当てながら、主に気候危機や環境問題に関する記事や翻訳を掲載していきます。
アラビア語の諺で、「船の望む風は来ない」という言葉があるそうです。砂漠や海で生活していた昔のアラブ人は、物事が意のままに進まないこと、しかしその状況に順応して乗り越えられることを、この言葉で言い伝えました。気候危機/環境問題の文脈において、彼らの姿勢から学べることがないでしょうか?
私たちが住む惑星の気候は、いま極端に不安定化しつつあります。もうすでに目にしているような破壊的な気候災害が頻繁に起こり、そして陰に陽に、勢いを増して起こる未来が、私たちの目の前にはあります。それにもかかわらず、そうした危機を真剣に受け止めた言葉や行動は、まだまだ少ない。
それでも、風が吹くのを待つのではなく、自分たちで船出するしかないのではないか? 望む向きの風が来なくても、さまざまな方向に帆を張りながら、なんとか渡っていくしかないのではないか?
いま世界では何が起こっているのか、人々はどんな言葉を語っているのか、それが知りたい。惑星規模で起こっている危機が、国民国家の枠組みで切り刻まれ、資源と労働力を搾取する経済的帝国主義ばかりが幅を利かせる。少しずつでも、そうした枠組みをほどいていきたい。そのために必要なのは、旅をすること、そして言葉を翻訳すること。風に国境がないように、言葉にも、ほんとうは国境がない。どこの国が進んでいるとかいう話ではなく、どこの場所でも、注目するべきアイディアがあり、翻訳されるべき言葉があるはず。そういう声を届けたい。
なんの後ろ盾もない、てづくりのジャーナルです。
一緒に活動してくれる方も、歓迎します。
(船と風)