何もしないことは「選択肢ではない」:ガザへ向かう船上のグレタ・トゥーンベリ
Middle East Eye、2025年6月3日
ムハンマド・ハッサン(Mohamed Hassan)、ヤマン・ムハンマド(Yaman Mohammed)、ライハーン・ウッディーン(Rayhan Uddin)

CATANIA LOCAL FLIES PALESTINIAN FLAG BEFORE MADLEEN LEAVES 1 JUNE TAN SAFI / Freedom Flotilla Coalition
原文リンク:https://www.middleeasteye.net/news/greta-thunberg-aboard-gaza-flotilla-doing-nothing-not-option
ガザに向かう船団のなかから、グレタ・トゥーンベリは『ミドル・イースト・アイ』〔以下、MEE〕に対して、各国の政府がパレスチナの人々を見捨ててきたなかで「一歩を踏み出し、まともな大人の役を引き受ける責任は、私たちの肩にかかっている」と伝えた。
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この著名なスウェーデンの気候活動家は、地中海の国際水域上からMEEのライブ番組に出演し、マドリーン号 〔Madleen。ガザで唯一の女性の漁師と言われるマーディリーン・クッラーブ(Madeline Kullab)に因んで名づけられた〕――イスラエルによるガザ封鎖の突破をこころみる最新の小型船――の船上の士気は非常に高いと伝えた。
「私たちは現在、自由船団の派遣の一環として、ガザへ向けて航海しています」とトゥーンベリは火曜日〔6月3日〕に語った。「士気はかなり上がっています」。
彼女と十一人の活動家たちは、日曜日〔6月1日〕にシチリアを出港した。包囲され飢えているパレスチナの人々への緊急の供給物資を積み込んで。
支援物資のなかには、乳児のための調整粉乳、小麦粉、米、オムツ、女性の生理用品、海水の脱塩キット、医療物資、松葉杖、そして子供用の義肢が含まれている。
「私たちは、こんなことが起こるのをただ座して許すことはできません。私たちは目撃しています……何十年にもわたって続きに続いている体系的な抑圧・民族浄化・占領のはてに、ジェノサイドが実行されているのを」とトゥーンベリは述べた。
「私たちはただの人間です、いま起こっていることに非常に胸を痛めた。そして進行中の事態を受け入れることはありません」。
先月〔2025年5月〕には、自由船団連合(Freedom Flotilla Coalition: FFC)によって組織された別の小型船コンシエンス号〔良心の意〕が、マルタ島の沖合付近で二機のドローンによる攻撃を受け、航海を続けることができなくなった。
「あらゆる証拠が、それがイスラエルの仕業であることを強く示唆しています」とトゥーンベリは語った。
彼女には、そうした攻撃がふたたび起きうるということがよく分かっている。
「もちろん、目標への途中で行く手を阻まれるという大きなリスクは存在しています」とこの22歳の人物は語る。「それでも私たちはガザにたどり着こうとしており、そのための計画を練っています」。
「私たちは平和的な活動家で、ボランティアであり、なんの武器も携行していません。平和的に国際水域上を航海しています。これは私たちの権利です」。
その小型船は、「安全、説明責任、連帯」のためにFFCのウェブサイトで生中継で追跡されているのだが、あと七日後にガザに到達すると予測されている。
FFCが組織した船は、これまでに二十年近くにわたり、イスラエルによるガザ地区に対する陸上・海上・海軍による封鎖を突破しようと試みてきた。18年にもおよぶ封鎖だ。
2010年、マヴィ・マルマラ号という派遣船がイスラエル軍による攻撃を受けた。イスラエル軍は船に乗り込み、十人の活動家たちを殺害した。それ以来、イスラエルの部隊は包囲を破ろうと試みる船舶をひんぱんに妨害し、拿捕してきた。
気候アクティヴィズムによって2019年の『タイム』紙〈今年の人〉に選ばれたトゥーンベリは、いまのところまだ阻止されていない。

MADLEEN BEFORE DEPARTURE 1 JUNE 2025 TAN SAFI / Freedom Flotilla Coalition
「私たちはお互いに対して、そしてパレスチナの人々に対して、できることは何でもすると約束してきました」と彼女は語った。
「各国の政府が私たちを見捨てているとき……そのときには、一歩を踏み出し、まともな大人の役を引き受ける責任は、私たちの肩にかかっています」。
イスラエルは十一週間にわたって、ガザへの人道的支援を完璧に遮断してきた。その後5月19日に部分的な解除を行なったが、通過を許されたのは非常に限られた国連の支援配給だけであり、アメリカが支援するスキームの無能さは多くの人々に非難されている。
多数の論者が、ここ数日、トゥーンベリと他の活動家たちを嘲笑し、脅迫してきた。もっとも顕著な例は、アメリカ合衆国の上院議員であるリンゼイ・グレアム(Lindsey Graham)だ。彼はXでこう書いた。「グレタとその仲間たちがちゃんと泳げることを祈るばかり!」。
トゥーンベリは、この三日間は海の上にいたため、こうしたポストは目にしていない。
「さいわい、私はここでソーシャルメディアにアクセスできないので、そうしたあらゆるヘイトを目にせずに済みます」と彼女は語った。
「本当に馬鹿げたことだと思います。ジェノサイドが起こっている今このときに、このジェノサイドに共犯している政治家が、せっかくのみずからのエネルギーの使い道を、少なくとも何かをしようとしている人々を嘲笑することに費やしているなんて」。
彼女は国際社会がパレスチナの人々を「裏切ってきた」と語る。ただ「座って何もしない」ばかりでなく、積極的に共犯行為を行なうことで。
「私たちの政府、私たちの公的機関、私たちの企業は、いままさにこのジェノサイドを支援しています」と彼女は語った。「それは私たちの税金です。パレスチナの人々を非人間化しつづけているのは、私たちのメディアなのです」。
「国際社会、いわゆる西側世界を代表して言いますが、私たちは、あなたたちを十分に支援しなかったことで、あなたたちを裏切ってきた。本当にごめんなさい」と彼女は言葉を足した。
トゥーンベリは、はじめ気候アクティヴィズムによってグローバルな公共の注目の的となったのち、パレスチナの人々への連帯を公然と表明してきたことで、これまで憎悪にさらされてきた。
だが、両者の原因は分かちがたく結びついているのだと彼女は語る。
「環境や気候をケアすることと人間をケアすることとを人々が切り離して考えているのは、私にとっては不思議なことです」とこの活動家は語った。
「私たちが立ち上がっているのは、あらゆる人間にとっての正義、持続可能性、そして解放のためです。社会正義なくして、気候正義はありえません」。
翻訳:中村峻太郎
公開日:2025年6月4日
©Middle East Eye, reprinted with permission.
Pictures from Freedom Flotilla Coalition (https://freedomflotilla.org/2025/06/01/a-month-after-conscience-attack-freedom-flotilla-ship-madleen-sets-sail-for-gaza/)