メキシコの活動家たちは、採掘の暴力を食い止めることで気候危機と闘っている
メキシコにおける先住民活動家と水の守り手たちは、かれらが「惑星全体の死の予兆」と呼ぶものと闘うための組織化を行なっている。
『トゥルースアウト』2026年9月12日

サンティアゴ川の近くに暮らし、それを守るコレクティヴであるサルト・デ・ビーダの一員であるアタウアルパ・ソフィア・エンシーノ。彼女は川の以前の姿を示すアルバムを掲げている/タマラ・ピアソン
目次
はじめに
アタウアルパ・ソフィア・エンシーソ(Atahualpa Sofía Enciso)は、自分の子供たちが普通の川とはどういうものなのかを知らない、と語る。メキシコ、ハリスコ州のサンティアゴ川――何百という工場からの汚染に由来する白い泡に覆われて流れている――の近くに暮らす彼女は、この地域もまた、ますます暑くなっていると指摘する。
「私の父は、よく自分が若かった頃のことを話すのですが、その頃はセーターなんて要りませんでした。というのもこんなに暑くなったり寒くなったりすることはなかったから。いまでは寒暖が極端になっていますが、それは川が汚染されて、かつてとは違って気温を調節することができなくなっているからです」と彼女は『トゥルースアウト』に語る。
エンシーソのような活動家たちにとって、「気候変動」という用語は、工業が環境と住民たちにたいして行使するこうした暴力を記述するものとして、不十分なものだ。ナワのバッタ農家であるミゲル・ロペス・ベガ(Miguel López Vega)のような先住民活動家は、メキシコが経験している深刻な旱魃、水不足、作物の不作および飢饉を地球という惑星全体の「死の予兆」だと言い表しており、どのような解決策であれ、被害を阻止することと同時に土地の直接的なケアも含み込まなければならないのだと語る。
その一方で、クラウディア・シェインバウム大統領は、全国各地での「持続可能な」フラッキング〔液体を高圧で注入することで岩石層を砕いてそこに含まれていた石油・ガスを採掘する方法〕を推進しつつある。メキシコの石油会社であるペーメックス(Pemex)が、ベラクルス州での試掘油井におけるガス漏れ――一五〇日間にわたって燃焼しつづけた――をやっと消し止めたばかりだというのに。八月、シェインバウムは、政府に選ばれた五四人の専門家による報告書――塩水が使用される場合にかぎってフラッキングの推進を推奨するもの――をもとに、みずからのフラッキング推進政策を追認した。
土地にたいする暴力
現地のたいていの活動家たちは、「持続可能な」フラッキングをまた新たなグリーンウォッシング〔「環境に優しい」という見せかけによって実際の環境破壊を糊塗・隠蔽すること〕が増えただけとしか考えていない。
八月に開催された第七回「水・生命・土地のための全国集会(National Assembly for Water, Life and Land)」において何百という水の守り手たちが著した最終決議文のなかには、次のような文章がある。「メキシコに住む私たちは、母なる大地の搾取、およびメガプロジェクトの強行に基づいたシステムのなかに生きている。採掘、非合法の伐採、水の囲い込み……そして私たちのような土地を守る人々にたいする暴力。これは、共同体としての、そして人類としての私たちの生存を脅かす永続的な戦争の一形態なのである」。
反フラッキングの活動家であるジェセニア・ホカベート・アントニオ・ペレス(Yesenia Jocabet Antonio Pérez)は、カギとなるのは自然への敬意なのだと論じる。同じくナワ共同体の評議員であり、メキシコ反フラッキング連盟(Mexican Alliance Against Fracking)の加盟団体セデパック・ウアステカ(Sedepac Huasteca)のメンバーであるアントニオはこう語る。「母なる大地は私たちのために与えてくれるのであり、私たちもまた、彼女を労わり、彼女に敬意を払わなければなりません。敬意を持たず、ただ突き進んでは土地を略奪し収奪する人々――彼らは地球を虐待しているのです」。
スペイン人たちが一五一九年に虐殺を犯したチョルルテカ(Cholulteca)地域の火山のあいだで暮らしているロペスは、「私たちがこの地域で組織化を行なっているのは、さまざまな企業が略奪と汚染を目的にここへやってきたからです……それを許すつもりはありません」と語る。
彼は、二〇二一年にこの地域に突如として現れた深さ約四五メートルの巨大な陥没穴について説明する。それは、とりわけボナフォン(Bonafont)の所有者であるダノーネ社(Danone)のような企業による現地の水の過剰搾取の結果として生じたものだった。
「こうした変化は、[惑星全体の]死の予兆です」とロペスは語る。事態を単に「気候変動」と言い表すことは、彼の主張によれば、このプロセスを受動的かつ抽象的なものに感じさせてしまう。その一方で、陥没穴のような特定の出来事を名指しすることで、「私たちの母なる地球が、私たち民衆にたいして行なわれつつある巨大な収奪に叫び声を上げている」ことを指し示すことができるという。
ロペスの住む場所より北のチワワ州では、カナダのシルベルコ鉱業(Silverco Mining)が、所有するクシウイリアチ銀鉱山(Cusihuiriachi silver mine)を再開すると告知したばかりだ。政府は八月、不特定の企業が同州の銀採掘に数十億ドルを支出することになるだろうと告知した。メキシコは世界的に見てトップの銀生産国だが、銀採掘は、水の汚染、過剰な水・電力使用、ガス排出、土地の更地化など、深刻な環境被害を引き起こす。
多国籍の採掘・エネルギー企業は、先住民コミュニティや農業コミュニティを「消耗可能な障害物」として扱っている。そう『トゥルースアウト』に語るのは、ゲレロ州テペティストラ(Tepetixtla)出身の小農で、全国先住民会議のメンバーであるルイスだ。彼の本名は、その身の安全のために明らかにしないことにする。

汚染されたサンティアゴ川、ハリスコ州/タマラ・ピアソン
メキシコにおける死の予兆
自分の住む地域では、気候変動のために人々はいまや飢えつつあり、あるいはますます食べられなくなりつつある、とルイスは語る。不規則かつまばらな降雨は、豆、トウモロコシ、およびメキシコウリの不作を引き起こしており、どの家庭でもトルティーヤの消費量は減少している。
彼の住むゲレロ州では、九月八日、複数の先住民の家族が、みずからのコミュニティを離れ、三台のバスに分乗して、アグロ工業企業ディベメックス(Divemex)で働くべく国の北部へと移住することを余儀なくされた。現在の旱魃は、もうこれ以上トウモロコシを育てることができないということを意味していたからだ。
メキシコでは、気候変動否認主義はほとんど存在していない。世論調査では、人為起源の気候変動を認めていない人口は八パーセントでしかなかった。この国では現実はあまりにも明白だからだ。長期に及ぶ旱魃、不十分なインフラ、および企業による水の搾取のために、日常的に家庭内で飲み水にアクセスできるのはいまやメキシコの住民の五二・五パーセントにすぎない。二〇〇一年から二〇二四年にかけて、山火事、農業への土地転用、公的および私的な建設、観光業、および組織的犯罪のために、四八九万ヘクタールの森林が失われた。メキシコはまた、苛烈な熱波、収穫の減少、およびハリケーンの激烈化にも直面している。
何千という小農たちが、最近、スペインの報道機関である『EFE』にたいして、ここ数年間の旱魃のために自分たちは破産寸前であることを伝えた。
「旱魃は、私たちに深刻な影響を及ぼしています。草原は燃えており、樹々は雨期までに成長が間に合わず、土地はひどく侵食されています」とナジャリート州エル・ナジャールに住むナアジェリ(Naayeri)のコムネーロ(共同土地所有者)であるフロレンティーノ・ロドリゲス・ブスタマンテ(Florentino Rodríguez Bustamante)は『トゥルースアウト』に語る。
降雨パターンは二、三〇年前にはもっと安定したものだった、と彼は振り返る。だが森林破壊と土地の野火によって表土がはぎ取られ、侵食が増加し、旱魃が引き起こされてきた。エル・ナジャールでは、五〇〇の町に住む先住民の農家たちが、いまや降雨の不足のために、トウモロコシ・豆の収穫――彼らの食生活の土台となるもの――を完全に喪失したと報告している。
プエブラ州に住むロペスも、まったく同じことを経験している。「私たちの水の略奪と売買、それは私たちの食べ物へと反映されています。私の住む地域では、一〇ヘクタールの土地がいまや何も生産しないままになっています。私たちは、かつて手にしていた食料を得られていないのです」。
「いつ雨が降るのかは、まったく分かりません」とサン・ルイス・ポトシ州に住むアントニオは賛同する。「雨が降るにしても、作物を結局だめにしてしまう嵐ばかりです……疫病も存在しています」。彼女は、共同体の組織化のおかげでほとんどの会社がこの地域には進出できなかったという。それでもいくつかの会社が進出してきたのだが、それが約束していた雇用は、結局のところ外国人や外部に住む人々の手に渡った。
「これらの会社は、私たちに病気、旱魃、そして水の汚染をもたらします」と彼女は、アメリカとメキシコに拠点を置くプロエサ・グループ(Grupo Prueza)が所有するアグロ工業企業シトロフルーツ(Citrofrut)を念頭に置いて語る。現地の人々は、この会社が廃棄物を近隣の河川に投棄していることを非難している。

ナワの農家であるミゲル・ロペス・ベカ/タマラ・ピアソン
「工業の地獄」の匂い
サンティアゴ川に歩いて行ける距離に暮らしているにもかかわらず、エンシーソは自分の子供たちをそこへ連れていくことは決してないと言う。この川とグアダラハラ市近郊のエル・サルトを守るコレクティヴである「ウン・サルト・デ・ビーダ(Un Salto de Vida)」のメンバーである彼女は、子供のひとりを、彼が三歳のとき、一度だけ川に連れて行ったときのことを物語る。「彼の反応を目にしたときには、緊張しました。彼の眼は赤く、怒ったようになり、泣きはじめて、こう言ったからです――息ができない、ここを離れたいよ、と」。
「子供たちに、川がこんな姿をしているなんて思ってほしくありません。何年か前に私たちはベラクルスに行き、そこにはきれいな川があって、子供たちはそこで人々が泳いでいることに強い印象を受けていました。そして、どうしてここでは川の匂いがしないのかと尋ねられました。川というのは普通、悪臭がするものだと思っているのです」と彼女は語る。
およそ七四一の化学・食料・飲料企業が、排水を直接サンティアゴ川に排出している。不法投棄を行なっている会社もあり、地面に吸収されなかった液体も、この川に行き着く。重要な汚染企業には、ハーシー(Hershey)、ホンダ(Honda)、ネスレ(Nestlé)、そしてゾルテック(Zoltek)が含まれる。そうした企業の行動は、がん、腎臓病、呼吸器疾患など、現地の住民たちに深刻な健康問題を引き起こしてきた。
エル・サルトとグアダラハラの工業回廊は、メキシコの公的機関が国内で特定した三〇の「工業地獄」ないし「環境非常事態」のひとつである。この地域の労働者と住民たちは、緩和された法律とずさんな監視をうまく利用する多国籍企業が怒涛の勢いで汚染を行なうなかで、がん・腎不全の危機的な罹患率を経験している。

ルイスはゲレロ州の農家であり、全国先住民会議のメンバー/タマラ・ピアソン
偽りの解決策を拒絶する
三〇のメキシコの団体は、「持続可能な」フラッキングというアイディア、およびそれを後押しする最近の報告書にたいして、批判的に反応してきた。報告書は、きわめて破壊的な行為を「それほど罪のないもの」にしようとしているだけなのだと。
ロドリゲスもまた、こうした解決になっていない解決策にうんざりしている。彼は政府による植樹プログラムである「センブランド・ビーダ〔命の種を撒く〕」を批判したが、それは水を保全する自生種の代わりに灌漑に依存する果樹を使用しているからであり、森林を保護する代わりに樹木の移植を進めているからだ。
「容易で手早い解決はうまく行きません。私たちがするべきことは。自然を窃盗から、山火事から、そしてお金が欲しいだけの伐採企業から保護することなのです」と彼は語る。
同様に、現在進められているEV生産を拡大する計画も、メキシコの化石燃料依存に対処してはいない。この国はそのエネルギーの七七パーセントを化石燃料から生成しており、輸送――ほとんどすべてがバスと自動車からなる――は温室効果ガス排出の一八・六パーセントを占めている。ミニ電気自動車を製造するという政府の新たな「オリニア計画(Olinia project)」は、より良い公共交通を求める人々の必要に応じたものではない。
反対に、石油はメキシコの人々にたいする暴力を意味している。汚染だけではなく「ウアチコル(huachicol)」――通常は組織化された犯罪組織による、パイプラインおよび貯蓄槽からの燃料の窃盗――という点でも。
エンシーソが暮らすハリスコ州は、石油貯蔵のカギとなる地域だ。「そういうわけでここには多くの治安部隊が存在し、組織的な犯罪……すなわち暴力と監視が、私たちの日常生活の一部になってきました」とエンシーソは語る。同時に、彼女は輸送と食料のための化石燃料依存についても詳細に語る。産業全体に立ち向かうことはまだ不可能だとはいえ、とエンシーソは付け加える、「私たちは怪物を細かな断片へと分解し、削り取ることができれば、それは大きな成果です。それが将来的に、もはや存続することができなくなるように」。
「重要なのは、消費主義を後ろに捨て去ることです」とアントニオは語る。
「グリーンな資本主義」は目くらましにすぎない、とルイスは結論づける。「真の問題は、あらゆる天然資源の搾取だからです」。

ナジャリート州エル・ナジャールに住むナアジェリのコムネーロであるフロレンティーノ・ロドリゲス・ブスタマンテ/タマラ・ピアソン
メキシコの土地の守り手たちが行なっていること
気候変動の最大の影響を受けるコミュニティのメンバーである先住民の活動家と水の活動家たちは同時、環境を守るための最大の前進を行なっている存在でもある。
「おそらく私たちが今すぐに油田を閉鎖することは不可能でしょうが、私たちはそちらの方向に向かってはいます。私たちが組織化を行なえば行なうほど、生命に味方する私たちの運動が、あらゆる人々の味方でもあることを、他の人々に納得させることができ、それによってこうしたタイプの[採掘]プロジェクトを止めることができる地点にまで達することができるのです」とルイスは語る。
ロドリゲスは、地域に水をもたらす小さな森林を育ててきた。三〇年前にはこの土地には数本の小さな樹木しか存在せず、それで自生種の樹木を植えることにしたのだと彼は語った。「私は樹々の世話をし、時間が経つにつれて、樹々はとても太くなり一〇メートルを超す高さにまで育ち、その時点で水流が現れはじめました。樹々は生長しつづけ、それだけ多くの水がやってきました。いまでは私の森は二四ヘクタールあります」。
そうした忍耐強い管理によってこそ生態系へのダメージは逆転することになるのだ、と彼は語る。「私は自分の大事な樹々を愛しています。これほど大きくなって、雲を集めてくれるからです」。
シナロア州トポロバンポ(Topolobampo)では、マジョ=ジョレーメ(Mayo-Yoreme)の人々を筆頭として、巨大アンモニア工場への直接の抵抗が行なわれてきた。その開業を阻止するために、その前で一〇〇日以上にわたるキャンプが行なわれているのだ。しかしかれらの抵抗はもう一三年間にわたって続けられており、工場――スイスに拠点を置き合衆国に資産をもつ企業であるプロマンGPO(Proman GPO)が所有するもの――の建設を阻止してきた。この工場は、保護された湿地、現地の野生動物、そして漁業を行なうコミュニティを脅かすことになるだろう。

汚染されたサンティアゴ川、ハリスコ州/タマラ・ピアソン
ロペスもまた、同様の長期におよぶ直接行動について描写してくれる。彼によれば、チョルルテカ地域でかれらは「私たちの土地を、利潤のために少数の人間に分け与える」ものである有料道路と観光プロジェクトを停止してきたという。かれらはまた、高圧送電塔および工業回廊の建設を差し止めるとともに、河川の汚染も防いできた。廃棄物投棄所の外側で二年間にわたりキャンプを行ない、それを封鎖することに成功してきた。今年の四月、複数の自治体が工場の永続的な閉鎖について、そして私企業がみずから汚染した土壌の改善を実行するということについて同意する署名を行なった。
「この国のさまざまな場所を流れる川がひとつに合流するのと同じように、もし私たちの闘争もまた合流したならば……私たちの[環境を]ケアし、守り、愛するためのコミットメントは、より多くの害を防ぐことになるでしょう」と彼は語る。
アントニオの共同体では、コミュニティが所有し管理するエネルギー源として、そして「送電網に依存しない」エネルギー源として、太陽光パネルに目が向けられていると言う。さらに、彼女のコミュニティは山火事のあとで再森林化を行なうとともに、集会やフォーラムも開催している。エンシーソはこう付け加える。「私たちは、健康な川のそばで生きるというのがどういうことなのか知りません。私たちは泳ぎかたも、魚の釣りかたも知りません。しかしそのことは、希望への呼びかけなのです――私たちが、日常生活という土台において、何を構築していかなければならないのかを教えてくれるから。希望とは遠い未来のことではありません。それは私たちが今、日々行なっていることなのです」。
タマラ・ピアソン(Tamara Pearson)はオーストラリア-メキシコのジャーナリスト、編集者、活動家、および文学フィクションの作者。最新の小説は『地球の目(The Eyes of the Earth)』であり、グローバルサウスに関するニュースレター『Excluded Headlines』も執筆している。
翻訳:中村峻太郎
©Truthout 2026, reprinted under the Creative Commons license(CC BY-NC-ND 4.0) .
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公開日:2026年9月30日
